-
Echoes In The Radio/ジャックス(1986)
-
2016.11.27 Sunday 14:34
JUGEMテーマ:音楽
2016年第46週の帰宅BGMは、ジャックスの『Echoes In The Radio』を聴きました。
本作は、1967〜1968年にかけて、ニッポン放送のラジオ番組「フォーク・ビレッジ」用に録音したスタジオライヴ音源で、「遠い海へ旅に出た私の恋人」と「地獄の季節」は、ジャックスがまだ早川義夫、水橋春夫、谷野ひとし、木田高介の4人編成になる前身の、早川義夫と高橋末広のデュオ時代の音源です。
サイケなど伝説のバンドとして今では名高いジャックスですが、遠い海へ旅に出た私の恋人」と「地獄の季節」を聴く限り、歌詞は内省的ですが、ハーモニーが新鮮なフォーク・デュオという感じです。
「マリアンヌ」以降は、バンドとしてのジャックスの音源という事になり、後の再評価される事になる楽曲群の演奏を聴く事が出来ます。
歌詞の内容は同年代のGSとは、やはり一線を画していますが、そのサウンドはどうなんでしょう。同年代のGSに相通ずるものがあるし、GSもそうだけど、The Byrdsなど、海の向こうのフォーク・ロックにも通じるものがあって、「伝説的な」とか形容詞を付けなくても、普通に聴けます。
「この道」と「いい娘だね」は、中でもお薦めの曲ですよ。
ジャックスを特別視しないで、普通に聴いて欲しいと思わせる音源ですね。
ジャックス,JACKS
EMIミュージック・ジャパン
【ディスク1】- 遠い海へ旅に出た私の恋人
- 地獄の季節
- マリアンヌ(アコースティック・ヴァージョン)
- われた鏡の中から(アコースティック・ヴァージョン)
- この道
- いい娘だね
- 時計をとめて ※〈CDエクストラ〉
-
ジャックスの奇蹟/ジャックス(1969)
-
2016.09.03 Saturday 16:24
JUGEMテーマ:音楽
また台風が来るのかなぁ…。
今年は、最初の台風の発生が7月と、史上まれに見る遅さでしたが、こう立て続けに日本に上陸されるのも何だかね…。
2016年第35週の通勤BGMは、ジャックスのセカンドアルバム『ジャックスの奇蹟』を聴きました。
ファースト・アルバムについては、2012年3月31日の記事で取り上げましたが、今回聴いたセカンド・アルバム、1969年8月のバンド解散後の、同年10月10日に発売されているんですね。
この為、収録されている音源は、ファースト・アルバムの没テイク等が使われて何とかアルバムとして仕立て上げており、伝説のファースト・アルバムと比較すると、インパクトの弱いものに仕上がっています。
このセカンド・アルバムが、ファーストと比較して評価が低いのは、何も解散に伴うゴタゴタだけではないでしょう。
ファースト・アルバム発表と同じ1968年9月に、ギタリストの水橋春夫が早くも脱退し、同年11月には角田ひろがドラマーとして加入します。
元々ドラムは木田高介の担当でしたが、角田ひろの加入により、木田はサックス、フルート、ヴィブラフォンへと転向。
この為、ファーストでは早川義夫の情念・怨念とも言えるような唱法をフィーチャーした強烈なサイケデリック臭が、今回聴いたセカンド・アルバムでは大きく後退しています。
その典型的な曲は、角田ひろがリード・ヴォーカルを執った「ジョーのロック」で、凡庸なロックンロールに戸惑いを覚えます。
日本ロック界でも屈指のドラマー、シンガーともいえる角田は、どういう経緯でこのバンドに参加する事になったのか、かなり気になるのですが、調べても分からないんですよね。
サイケデリック感という音楽性が後退した事により、音楽的には良く言えば「聴ける音楽」に、悪く言えば「普通の音楽」に変わってしまったのですが、だからといって、このバンドの「毒」が完全に抜かれてしまったのかというと、そういうわけではないですね。
「堕天使ロック」では、早川が相変わらず情念・怨念的な唱法を披露していますし(楽曲はしっかりと音楽していますので、どちらかというと演歌的ですが…)、早川が楽曲を提供した「ロール・オーヴァー・ゆらの助」や「敵は遠くに」にでは、社会へのクールな視点が窺えます。
また、木田が管楽器へ転向し、特にフルートで関わった曲「花が咲いて」や「敵は遠くに」では、どこかKing Crimson的な悟りというか達観的な雰囲気を醸し出していて、混沌としたサイケ感からまた一歩違った感覚を味わえて、これはこれでいいと思いますね。
解散していながらもアルバムを出し、没テイク等を集めたとはいえ、この音楽性の変化は、何とか売れるものを作れというレコード会社の意向があったのかなぁと思われる1枚ですね。
ジャックス,JACKS
EMIミュージック・ジャパン
【ディスク1】- ジョーのロック
- この青い海に
- 堕天使ロック
- 運命の囚人
- トゥ・ラブ・ユー
- Dm-4-50
- 花が咲いて
- 君をさらって
- ロール・オーヴァーゆらの助
- ハウ・トゥ・ラヴ
- 敵は遠くに
-
ヤングサウンド・R&Bはこれだ!/ザ・ダイナマイツ(1968)
-
2013.03.17 Sunday 15:23JUGEMテーマ:音楽
2013年第10週の帰宅BGMは、ザ・ダイナマイツ唯一のアルバム『ヤングサウンド・R&Bはこれだ!』を聴きました。
先日、帰宅時に横浜の新星堂を物色していたのですが、別にセールのワゴンでなくても、よく探せばお買い得盤があるものですね。
特に日本のアーティストのアルバムは、なかなかセールの対象にはならないのですが、定価2,000円の新品未開封の本アルバムも、半額の1,000円で買えました。
B級GSグループながら、ヴォーカルの瀬川洋、ギターの山口富士夫といった個性的なメンバーがいて、評価の高いザ・ダイナマイツのアルバムがこんな形で買えたのはラッキーでした。
やはり何といっても圧巻なのは、冒頭の「トンネル天国」ですね。
「トンネル天国」という曲のタイトルに面食らってしまいますが(苦笑)、リードギターの山口富士夫が、この曲ではリードヴォーカルを執っているとの事ですが、ダミ声のワイルドなヴォーカルにファズギターはなかなかかっこよく、コーラスもキマッています。
今回聴いたアルバムには、アルバム収録曲の他に、彼等が出したシングル曲も収録されていて、アルバム収録のヴァージョンとは異なる、「トンネル天国」のシングルヴァージョンも収録されているので、聴き比べてみるのもいいですね。
彼等の唯一のオリジナル曲「のぼせちゃいけない」も、単純なロカビリー調の曲ですが、ザ・ダイナマイツの名に恥じず、とにかく生きの良さが窺えます。
「ウォーキング・ザ・ドッグ」や「マーシー・マーシー・マーシー」といったカヴァー曲も、なかなかいい味を出していますね。
本格的なロックではなく、歌謡曲の一(いち)音楽としての当時のGSにとって、レコード会社主導により、Bee Geesの「マサチューセッツ」や、The Monkeesの「デイドリーム」といった、洋楽のポップ・グループのカヴァーや、いかにもGS的楽曲ともいえる「ユメがほしい」といった、職業作曲家による曲を歌う事は宿命ですが、とはいえ、そういった曲でも実力のあるグループの片鱗は見せています。
付属で収録された「真夏の夜の動物園」は、何だかよく分かりませんが(苦笑)、「トンネル天国」同様、ワイルドな彼等の魅力に溢れています。
もう少し長く活動出来ていれば、ザ・ゴールデン・カップスやモップスのように、本格的なロックへと移行したかもしれませんね。ザ・ダイナマイツ
ビクターエンタテインメント
【ディスク1】- トンネル天国
- マサチューセッツ
- デイドリーム
- 恋はもうたくさん
- ウォーキング・ザ・ドッグ
- 恋の終列車
- マイ・ガール
- ユメがほしい
- ジュディのごまかし
- マーシー・マーシー・マーシー
- のぼせちゃいけない
- 大人の戦争
- 真夏の夜の動物園
- 毛皮になったしま馬
- 恋は?
- 世界中にほゝえみを
- バラと悪魔
- 夢でもいいさ
- 恋はもうたくさん(シングル・ヴァージョン)
- トンネル天国(シングル・ヴァージョン)
-
ジャックスの世界/ジャックス(1968)
-
2012.03.31 Saturday 23:29JUGEMテーマ:音楽
2012年第13週の帰宅BGMは、ジャックスの『ジャックスの世界』。
当初は、このアルバムを通勤BGMにしようかと思いましたが、さすがに休み明けの朝からこのアルバムでは、1日が、そして1週間が重い気分になりかねないと思いましたので(苦笑)、帰宅BGMにした次第です。
ロック界には、伝説のバンドと呼ばれるバンドは数多ありますが、このバンドはそう呼ばれるのに相応しいバンドでしょう。
その前身をナイチンゲルという名で、早川義夫他で結成されたジャックスは、早川、水橋春夫、谷野ひとし、木田高介の4人で、1968年3月シングル「からっぽの世界」でデヴュー。同年9月には、今回聴いたアルバムが発売されました。
しかし、早くもギターの水橋が脱退し、11月には角田ひろが加入しますが、翌69年8月に解散。
デヴューから約1年半しか活動せず、活動時はほとんど売れなかったバンドが、後年多くのバンドに影響を与えたのは、その特異な音楽性にあるでしょう。
アルバム冒頭を飾る「マリアンヌ」は、とにかく強烈過ぎる1曲。
サイケな歌詞が展開されるこの曲は、歌詞もそうですが、早川義夫の情念、いや怨念とも表現したくなるその唱法といい、水橋のギターと木田のドラムは、もはや音楽というより、伴奏の付いた詩の朗読。
まだ日本ロック黎明期の時代なので、暗中模索の末出来た曲か?とも思いたくもなるのですが、既にBeatlesは66年に来日していますし、GS全盛の時代。ロックンロールとは何なのか全く知らないというわけではないでしょう。
ジャックスは、GS全盛期に登場したので、彼等をGSと捉える向きもありますが、やはり日本独特のサイケバンドと捉える方が相応しいかもしれません。
歌詞の中に、差別用語が入っている事で、バンド再評価後も長らく発売禁止になっていた「からっぽの世界」も、独特な世界が展開されています。
ジャックスは、非常にマイナーな存在でしたが、「時計をとめて」は、ジャックスを知らない方でも有名な曲ですね。
水橋はジャックス脱退後、レコード製作の裏方に回りますが、80年代のアイドルWinkはこの曲をカヴァーしており、水橋はそのカヴァーに関わっています。
非常に美しいバラードですが、このアルバムに収録されているオリジナルは、「マリアンヌ」と「からっぽの世界」に挟まれていて、やはり独特な雰囲気を持っていますね(苦笑)。
最初の3曲があまりにも強烈過ぎて、その後の曲がどうしても印象が薄いのですが、今回改めてこのアルバムを聴き直して感じたのが、ちゃんと普通にロックンロールしていたところ。
「われた鏡の中から」以降の曲は、水橋のギターもファズギターを弾いていて、歌詞の内容と早川の唱法はともかく、音楽自体はロックンロール。
こういう面が、彼等をGSと捉える要因になっているのかもしれませんね。
「遠い海へ旅に出た私の恋人」は、ザ・テンプターズの「エメラルドの伝説」辺りに近い曲かなと思います。
ちなみに「どこへ」は、ジャジーで、なおかつジャムっぽい雰囲気もあり、なかなか秀逸な曲です。
ただ、やはり女の子の黄色い声援が飛んでいたGS全盛期にあって、後のDEW辺りにも影響を与えたのではないかと思われる、その狂気の唱法や歌詞は、やっぱり売れないだろうなと思ってしまう1枚です。
ただ聴けば聴くほど味が出てくる1枚だと今回改めて思いました。評価:
ジャックス
EMIミュージック・ジャパン
【ディスク1】- マリアンヌ
- 時計をとめて
- からっぽの世界
- われた鏡の中から
- 裏切りの季節
- ラブ・ジェネレーション
- 薔薇卍
- どこへ
- 遠い海へ旅に出た私の恋人
- つめたい空から500マイル
-
サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン/ザ・モップス(1968)
-
2011.12.17 Saturday 22:44JUGEMテーマ:音楽
帰りのBGMは、ザ・モップスのデヴューアルバム『サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン』を選んでみました。
日本最初のサイケデリック・サウンドを標榜してデヴューした彼等ですが、元々はインストバンドからのスタートだったんですね。
その後デヴューするにあたり、当時のホリプロの社長、堀威夫の意見を取り入れ、サイケデリック・ロック・バンドとしてデヴューするのですが、このデヴューアルバムは、内容といい、ジャケットといい、なかなか雰囲気が出ています。
Eric Burdon & The Animalsの「San Franciscan Nights」、「Inside - Looking Out」をカヴァーした「サンフランシスコの夜」、「孤独の叫び」といい、Jefferson Airplaneの「Somebody to Love」、「White Rabbit」をカヴァーした「あなただけを」、「ホワイト・ラビット」。そしてThe Doorsの「Light My Fire」をカヴァーした「ハートに火をつけて」と、当時アメリカ西海岸を席巻していたサイケデリック・ロックの定番どころをしっかりカヴァーしていますし、そのカヴァー振りはなかなかいい雰囲気が出ています(完コピという感じがしないわけではないですが…)。
サイケとは違いますが、The Box Topsの「The Letter」をカヴァーした「あの娘のレター」も秀逸の出来だと思います。
単なる洋楽をカヴァーしているだけならば、それほど特に注目に値するグループではありません。
彼等は、遅れてきたとはいえグループ・サウンズのグループですので、やはり職業作曲家達による歌謡曲調の曲をアルバムに収録しています。
阿久悠と村井邦彦による「朝まで待てない」、「朝日よさらば」、阿久悠と大野克夫による「ベラよ急げ」がそういった曲に該当するのですが、これの曲は日本語で歌われる歌詞だけを取り上げるならば、確かに人気のアイドルグループが歌う歌謡曲調の曲なのですが、展開されるサウンド、特に星勝によるビートの効いたファズギターは、60年代の英米のロック、サイケデリック・ロックの雰囲気を醸し出していて、先に挙げた洋楽のカヴァーに遜色ありません。
最後の「消えない想い」も、やはり阿久悠と村井邦彦コンビによる日本語の曲ですが、この曲はシタールのようなアコースティック楽器が使われていて、サイケデリック・サウンドへのこだわりが感じられます。
オリジナルの「アイ・アム・ジャスト・ア・モップス」も、ビートグループとしての非凡な才能が感じられる1曲です。
僕の持っているのは再発CDですが、元々6曲目に収録されていた「ブラインド・バード」は歌詞に問題がある為、現在では収録されていません。評価:
ザ・モップス
ビクターエンタテインメント
【ディスク1】- 朝まで待てない
- サンフランシスコの夜
- アイ・アム・ジャスト・ア・モップス
- 孤独の叫び
- あの娘のレター
- あなただけを
- ベラよ急げ
- ホワイト・ラビット
- 朝日よさらば
- ハートに火をつけて
- 消えない想い
- お前のすべてを
- 熱くなれない
-
ブルースの新星〜パワー・ハウス登場/パワー・ハウス(1969)
-
2011.10.23 Sunday 01:54JUGEMテーマ:音楽さて前回書いたように、今週の通勤BGMは、パワー・ハウスの唯一のアルバムなのですが、このアルバムを初めて聴いた時は、とにかくぶったまげました。
ザ・ゴールデン・カップスの流れから聴いたと思うのですが、妙なアルバムタイトルとはいえ、カップスの弟分的なバンドという事で、カップスのアルバムを買い揃えた中古屋の棚で見つけた時は、カップスのような洋楽指向の強いGSなのかなとしか思っていませんでした。
メンバーの名前は全然知らなかったのですが、唯一柳ジョージ(パワー・ハウス時代は、譲治)の名前が入っていた事も購入のきっかけでした。
それが、まさかこんな本格的なブルーズ・ロック・バンドだったとは…。
パワー・ハウスは、日本初のブルーズ・ロック・バンドとして登場してきたのですが、もう一曲目の「Back In The U,S,S,R,」から度肝を抜かれます。
同曲は、The Beatlesの超有名曲ですが、この曲をここまで本格的なブルーズ曲に変えてしまうなんてまず想像付きません。このカヴァーだけで、強烈なインパクトを与えてしまいます。
しかも、メンバーの力量も凄い。竹村栄司のハスキーなヴォーカル、陳信輝のブルージーなギターなど、とにかく黒っぽくて十分な説得力を持っています。
収録曲は、Jimi Hendrixの「Foxy Lady」やThe Yardbirdsの「You're Better Man Than I」、Willie Dixonの「Hootchie Kootchie Man」など、ロックやブルーズのカヴァーを取り上げるところは兄貴分のカップスと同じだし、僕の持っているのはCDなので、裏ジャケットなのか中のライナーノーツなのか分かりませんが、メンバーの好きなアーティストが書かれているところに、エディ藩やルイズルイス加部の名前が書かれているところを見ると、少し微笑ましく感じますが、音楽の本格度は完全にカップスを食ってしまっているように感じます。
注目の柳譲治はベーシストで、ヴォーカルも1曲しか執っていません。
僕が柳ジョージの音楽を意識した頃には、既にレイニーウッドは解散していましたが、『夜のヒットスタジオ』などの番組には出ていて、ストラトキャスターを弾いていたと思いますし、柳ジョージといえば、ギターとヴォーカルのイメージが強いと思うのですが、ベースでヴォーカルも少ないのは意外でした。
でも、このアルバムで唯一リードヴォーカルを執っている「Spoonful」では、同じハスキーヴォイスといっても、硬質な竹村栄司のそれと違って、渋く深みがあり、幅があり柔軟性のあるヴォーカルで、後のカップスでのヴォーカルやソロでの活躍も分かるような気がします。また、この頃からほとんど声が変わってないのは驚きです。
僕は、後追いながら順を追って、柳ジョージという人に入っていったのですが、また一人、日本ロックの黎明期を支えてきた人が、また一人いなくなって、寂しい限りですね。評価:
パワー・ハウス
EMIミュージックジャパン
【ディスク1】- バック・イン・ザ・U.S.S.R.
- フーチー・クーチー・マン
- アイ・ウォント・トゥ・ノー
- フォクシー・レディー
- ユー・アー・ベター・マン
- オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ
- スプーンフル
- グッド・モーニング・リトル・スクール・ガール
-
ゴールデン・カップス・リサイタル/ザ・ゴールデン・カップス(1969)
-
2011.10.15 Saturday 23:00JUGEMテーマ:音楽
不定期連載ザ・ゴールデン・カップス第5回目は、5枚目のアルバム『ゴールデン・カップス・リサイタル』です。
ギターのエディ藩とケネス伊東が脱退し、ベースのルイズルイス加部がギターに転向、ベースには新加入の林恵文が参加しています。
前作に引き続きライウ゛アルバムです。渋谷公会堂でのライウ゛を収録しています。
このアルバム、Side1とSide2とでは、収録内容が大きく異なります。
Side1は、歌謡曲を収録。Side2は、洋楽ロックのカヴァーを収録。
見事なまでの色分けです(苦笑)。
ジャケットに掲載されているメンバーの格好をみると、ジャケット姿のと、ジーンズなどのラフな格好のと2種類あるので、実際のライウ゛でも、演奏する曲をハッキリ線引きしていたんでしょうね。
Side1歌謡曲側は、「いとしのジザベル」といった、それまでの自分達の歌謡曲調の曲をサラっとメドレー風に演奏。
「蝶は飛ばない」、「もう一度人生を」だけは、一応フルで演奏しているようです。
Side2は、ロックのカヴァーのオンパレード。
Creamでお馴染みの「Spoonful」をはじめとして、Led Zeppelinの「Communication Break Down」やThe Bandの「The Weight」といった、やはりお馴染みのナンバーも。
他にFleetwood MacやDeep Purple、Jeff Beck Groupといったバンドの曲をカヴァーしています。
Side1と比べると、伸び伸びと演奏していますね。
今までも洋楽のカヴァーはありましたが、ブルーズやロックでもブルーズロックが中心だったのに対して、このアルバムでは、ニューロックのカヴァーが目立ち、彼等も時代の岐路に立たされているのが強く感じ取れます。
ライウ゛アルバムとしてのインパクトは、前作ほどありませんが、音楽の転換点という意味では、面白いアルバムです。
このアルバムを通勤BGMとして聴いていた今週末、柳ジョージさんが亡くなられたと報じられました。
柳ジョージさんは、今回聴いたザ・ゴールデン・カップスの弟分的バンド、パワー・ハウスのメンバーで、後にカップスのメンバーにもなります。
ご冥福をお祈りすると同時に、来週はパワー・ハウスを通勤BGMとして取り上げたいと思います。評価:
ザ・ゴールデン・カップス
EMIミュージック・ジャパン
【ディスク1】- オープニング~長い髪の少女
- いとしのジザベル~陽はまた昇る
- 銀色のグラス
- 愛する君に
- 本牧ブルース
- 蝶は飛ばない
- もう一度人生を
- オープニング~スプーンフル
- ウィズアウト・ユー
- コミュニケーション・ブレーク・ダウン
- ハード・ロード
- レット・ミー・ラヴ・ユー
- ザ・ウェイト
- 蝶は飛ばない
-
ゴールデン・カップス・スーパー・ライヴ・セッション/ザ・ゴールデン・カップス(1969)
-
2011.08.07 Sunday 16:08JUGEMテーマ:音楽
不定期連載ザ・ゴールデン・カップス特集、第4回目は、4枚目のアルバム『ゴールデン・カップス・スーパー・ライヴ・セッション』です。
4枚目のアルバムは、彼等の地元横浜の「ゼン」というライヴハウス(?)で、1969年4月21日に行われたライヴを収録したアルバムです。
GSのライヴという事で、いくら本格的なロック志向の強かった彼等でも、選曲には「長い髪の少女」といった歌謡曲的なヒット曲も含めるだろうと思うのですが、当日彼等がそういった曲を1曲も演らなかったかは知りませんが、アルバム収録曲を見ると、これが見事なまでに1曲もそういう曲を含んでいませんね(苦笑)。
アルバムは、ファーストアルバムにも収録されている「Got My Mojo Working」をはじめとして、Simon & Garfunkelの「59th Street Bridge Song」、Donovanの「Season Of The Witch」、Themの「Gloria」などの演奏を収録しています。リードギターのエディ藩、キーボードのミッキー吉野をはじめとして、ブルージーな演奏の上手さや、歌の上手さを堪能できますし、ライヴならではの迫力も楽しめます。
なかでも聴いててぶったまげるのは、Creamのファーストアルバムに収録されていて有名な、Skip Jamesの「I'm So Glad」ですね。エディ藩はリードヴォーカルも完璧にキメていて脱帽です(その他の曲でもエディ藩のヴォーカルは本当に上手いです)。
最後は、オリジナルの「ゼンのブルース」という曲なのですが、パワー・ハウスの陳信輝と柳譲治が加わって10分近くの繰り広げ、最後まで息の抜けないアルバムです。評価:
ザ・ゴールデン・カップス
EMIミュージック・ジャパン
【ディスク1】- モジョ・ワーキング
- アイム・ソー・グラッド
- 59番街
- ワン・モア・ハートエイク
- 魔女の季節
- グロリア
- 悪い星の下に
- マンズ・テンプテーション
- ゼンのブルース
-
ブルース・メッセージ〜ザ・ゴールデン・カップス・アルバム 第三集〜/ザ・ゴールデン・カップス(1969)
-
2011.05.21 Saturday 14:06JUGEMテーマ:音楽
不定期連載ザ・ゴールデン・カップス、アルバム紹介は、サードアルバム『ブルース・メッセージ〜ザ・ゴールデン・カップス・アルバム 第三集〜』です。
もともと洋楽志向の強かったザ・ゴールデン・カップスですが、この3枚目のアルバムではブルーズを取り上げており、脱GS化へ向かっていきます。
アルバム1曲目「本牧ブルース」と最後の曲「4グラムの砂」は、なかにし礼や村井邦彦による曲で、「テイク・スリー」はオリジナル曲。
上記3曲を除いて他の曲は、Paul Butterfield Blues Band、Canned Heat、The Blues Projectなどの曲をカヴァーしています。
「本牧ブルース」と「4グラムの砂」は、いかにも歌謡曲調の曲ですが、「本牧ブルース」の方は中間のギターソロが歌謡曲とは思えないカッコよさがあります。
「本牧ブルース」が終わると、ブルースとは名ばかりの歌謡曲調の曲から一転して、ブルージーな「ウォーキン・ブルース」に移るのですが、このアルバムでは「ウォーキン・ブルース」をはじめとして「ゲット・アウト・オブ・マイ・ライフ」、「絶望の人生」と、Paul Butterfield Blues Bandの『East West』に収録されている曲を3曲もカヴァーしています。
「ウォーキン・ブルース」では、それまでのファズギターから脱して流麗なギターソロを披露していて、ロック化の流れを強く感じさせます。
続く「ルシール」は、Little Richardの曲ですが、ここではファズギターが使われていますが、渋いギターソロを決めていて、エディ・藩とマモル・マヌーのクールなヴォーカルが魅力的。
「ゲット・アウト・オブ・マイ・ライフ」は、「ルシール」同様ファズギターによるギターソロが後半部に決まっていますが、中間部のピアノソロも聴き応えがあります。
「絶望の人生」は、ギターとピアノのクールな演奏とともに、マモル・マヌーの艶っぽいヴォーカルが堪りません。
ここまでは、クールでブルージーな世界が堪能できます。
Smokey Robinson & The Miraclesの「You've Really Got A Hold On Me」と、Sam Cookeの「Bring It On To Me」をメドレー形式でカヴァーした、R&B調の「君は僕に首ったけ〜悲しき叫び」を挟み、「泣かずにいられない」は、The Blues Projectの「I Can't Keep From Crying Sometimes 」をカヴァーしたもので、11分に及ぶ聴き応えのある曲で、緊張感のある演奏が楽しめます。
「イーヴル・ウーマン」は、Canned Heatのカヴァー。
唯一のオリジナル曲「テイク・スリー」は、へヴィでブルージーなナンバーですが、リードヴォーカルを執るケネス伊東の浮遊感漂うサイケな曲です。終わり方がちょっと中途半端かなと思います。
1969年というとGSは退潮傾向に向かうのですが、それにしてもこの高い演奏力と、音楽の本格化には驚かされます。評価:
ザ・ゴールデン・カップス
EMIミュージック・ジャパン
【ディスク1】- 本牧ブルース
- ウォーキン・ブルース
- ルシール
- ゲット・アウト・オブ・マイ・ライフ
- 絶望の人生
- 君は僕に首ったけ~悲しき叫び
- 泣かずにいられない
- イーヴル・ウーマン
- ワン・モア・タイム
- テイク・スリー
- 4グラムの砂
-
ザ・ゴールデン・カップス・アルバム第2集/ザ・ゴールデン・カップス(1968)
-
2011.01.15 Saturday 13:32
正月休みの後、3日通勤してすぐ3連休になり、新年第2週も4日のみの通勤となりましたが、2011年通勤BGM第2週は、行きはザ・ゴールデン・カップスのセカンドアルバム、『ザ・ゴールデン・カップス・アルバム第2集』を聴いてきました。
このアルバムから、キーボードのミッキー吉野が加わっています。ハワイの日系アメリカ人二世であった、サイドギターのケネス伊東が、ビザの関係で一時活動を休止していた事もあり、ジャケットにはケネス伊東が写っていたりいなかったりしています。
デヴューアルバムは、まだサウンドに堅さも感じられましたが、さすが実力派のGSグループという事で、このセカンドアルバムでは余裕が感じられます。キーボードが加わった事によって、サウンドも洗練されてきたように感じます。
アルバムは、Jr.Walker & The All Starsの1965年のヒットナンバー、「Shotgun」のカヴァーから始まりますが、女の子達の、英語の黄色い声援が飛び交うこの曲は、やはりこのグループが、他の歌謡曲GSとは違うんだぜというものを、ひしひしと感じさせます。ライヴ風の録音で、曲の途中でメンバー紹介と、紹介されたメンバーのソロ演奏があるところも、実力派、ライヴバンドとしての顕示でしょうか(^^)?
次曲「ホールド・オン」は、Sam & Daveの1966年のシングルヒット曲「Hold On I'm Comin'」のカヴァーですが、トランペットの演奏を伴ったこの曲は、ソウル色の強い曲です。
マモル・マヌーの艶っぽいヴォーカルをフィーチャーした「ウーマン・ウーマン」(この曲も洋楽カヴァー)を挟み、このアルバム最初の目玉曲「Money」は、リードギターのエディ藩がリードヴォーカルも執る曲。この曲もモータウン最初のヒット曲のカヴァーですが、ギターとキーボードによるアプッテンポの演奏が光ります。
数曲飛んで「長い髪の少女」は、グループを代表する歌謡曲ですが、歌謡曲であっても、イントロのギターの演奏に、グループの意地みたいなものを感じます。次曲の「愛する君に」も歌謡曲ですが、この曲でもミッキー吉野のキーボードプレイがなかなかカッコいいです。
Otis Reddingのカヴァー「ドック・オブ・ザ・ベイ」を挟み、このアルバム2番目の聴き所が、「過ぎ去りし恋」。今回改めてこのアルバムを聴いて、この曲の存在に気付きましたが、途中デイヴ平尾の少し暑苦しいヴォーカルが入るものの、クールで艶っぽいマモル・マヌーと、デイヴ平尾のリードヴォーカルをフィーチャーしたこの曲は、至高のソフトロック!全編英語なので、洋楽のカヴァーかと思いましたが、調べてみるとオリジナル曲との事。脱帽です。
次曲「ストレンジ・ブルー」は、言わずもがなCreamの有名曲のカヴァーですが、ファズギターとマモル・マヌーの怪しげなリードヴォーカル、ミッキー吉野の落ち着いたキーボードプレイはやはり凄いです。
マカロニウェスタン辺りで聴けそうな、ルイズルイス加部による「午前3時のハプニング」は、冒頭テープの早回しの音源を使っている面白い曲。
そしてアルバムは、アニメ『巨人の星』でも使われた歌謡曲「愛する君に」で終わります。
デイヴ平尾とマモル・マヌーが、リードヴォーカルを分け合う曲が何曲かあったり、高度な演奏技術と、クオリティの高いオリジナル曲の存在など、ファーストアルバムに増してますます聴き所の多いアルバムになっています。
- ←back 1/2 pages next→